hirohiro

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仮面の遺言7

第4章「久遠紗英の沈黙」 ――久遠紗英(くおん・さえ)。 その名前は、記憶の奥底から突然浮かび上がったものだった。 どこか儚げで、美しい響き。けれど霧島の中では、彼女の顔さえ曖昧だった。 だが、達也ははっきりと言った。 「紗英が鍵だ」と。 ...
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仮面の遺言6

第3章「達也の生還」 302号室。 扉の前に立つ“彼”を、霧島は目を疑った。 「……達也?」 驚きと混乱のなか、霧島は一歩踏み出す。しかし男は無言のまま、霧島を見下ろしていた。 髪はぼさぼさに伸び、頬は痩せこけている。まるで幽霊だ。だが、確...
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仮面の遺言5

302号室。 それは、霧島が忘れていた記憶のひとつだった。 かつて、彼が“研修医として立ち入りを禁じられていた部屋”。 野本と待ち合わせたカフェで、彼女は低い声で囁いた。「ねえ、壮一郎先生……ほんとに思い出してないの? あなた、“302号室...
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仮面の遺言4

第2章「記憶の鍵」 鏡の中にいたのは、確かに自分……のはずだった。 けれど、その目は冷たく、どこか狂気じみていた。自分の顔なのに、自分じゃない。 霧島壮一郎は、その異様な視線に息を呑んだ。 ──なぜ、笑っている? 鏡の中の“彼”は、微笑んで...
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仮面の遺言3

次の日、霧島は達也の遺体が発見されたビルを訪れた。 自殺とされた場所には、すでに立ち入り禁止のロープ。 だが、霧島にはある“確信”があった。 何かを見逃している。 タクシーでビルの管理人を呼び出し、医師としての職権をチラつかせて話を通す。 ...
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仮面の遺言2

2日後。ニュースサイトのトップには、達也の名が大きく載っていた。「一流企業のエリート社員が投身自殺」 多忙によるうつ状態。過労死ラインを超える残業。精神的な不調。 まるでテンプレのように並べられた言葉に、霧島は憤りを覚えた。 違う。 達也の...
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仮面の遺言

第1回 プロローグ〜第1章「事故死ではない」プロローグ 部屋には、血のついた手紙と、1冊の日記帳、そしてひとりの男がいた。 鏡に映ったその男の瞳は、深い闇をたたえながらも、どこか悲しげだった。「俺は……誰を殺した?」 その言葉は誰にも届かず...